免疫グロブリンの実力免疫グロブリンの実力

menu

製品基本情報製品基本情報
製品基本情報製品基本情報
IVIG WATCH!

【視神経炎関連】WEB講演会 視神経炎の急性期における免疫グロブリン療法

IVIG WATCH!

【視神経炎関連】
WEB講演会 視神経炎の急性期における免疫グロブリン療法

Opening Remarks
急性期視神経炎のアプローチ

独立行政法人国立病院機構 北海道医療センター
臨床研究部長 新野 正明 先生

視神経炎鑑別診断のポイント

視神経の障害により来院された患者さんに対しては、問診やさまざまな検査を元に原因疾患を探ることになりますが、典型的な視神経炎(ON)と診断された場合、その鑑別が重要です。眼科でONと診断されると、脳神経内科では多発性硬化症(MS)を含め、視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)抗体関連疾患(MOGAD)といった原因疾患の検索を行います。まずは問診ですが、過去に症状が無かったかも含め、詳細に病歴を確認し、神経学的検査を一通り行います1)図1)。その上で次の検査に進みますが、なかでもMRIは非常に重要なツールで、異常信号・腫脹・造影病巣などの有無などからONへのアプローチが進みます。また、MOG抗体は、一部の症例では髄液でのみ陽性となるケースがあるため、特にMOGADを疑う場合には髄液でも検査を行います。

(図1)MS、NMOSD、MOGAD診断のための検査

MS、NMOSD、MOGAD診断のための検査の表MS、NMOSD、MOGAD診断のための検査の表

文献1)を元に作成

一方、NMOSDの診断に必要なAQP4抗体の測定では保険適用があるのはELISA法のみとなりますが、特に感度においてcell-based assay(CBA)法よりも低いという問題がある他、中には偽陽性という場合もあります2)。抗体検査の結果によって診断が異なるという点に日常的に注意し、ELISA法での測定結果に少しでも懸念がある場合にはCBA法(保険適応外)での測定も考慮します。

各ONの特徴

MSは片側性で、短い病変、症状が比較的軽いことが多く、MOGADは両側同時のONのこともあり、急性期治療への反応性が比較的良いとされます3)4)。一方、AQP4抗体陽性ONは重篤な視神経の障害を呈し、再発の頻度が高いとされています3)4)。NMOSDの場合には、数年、特に1年以内の再発が多く5)、初発が視神経だと次も視神経というように、初発の部位と次の再発部位が同じことが比較的多いといわれています6)。このような各ONの特徴を把握しておくことが、急性期ONのアプローチのためには重要です。

参考文献
1)
特定非営利活動法人MSキャビン. 視神経脊髄炎完全ガイドブック 第1版. 特定非営利活動法人MSキャビン, 東京, 2018.
2)
高橋利幸ほか. 医学と薬学. 2016; 73: 1297-1300.
3)
Hor JY, et al. Front Neurol. 2020; 11: 501.
4)
Sato DK, et al. Neurology. 2014; 82: 474-481.
5)
Akaishi T, et al. Neurol Neuroimmunol Neuroinflamm. 2019; 7: e640.
6)
Zandoná ME, et al. Mult Scler. 2014; 20: 1908-1911.

視神経炎の急性期における免疫グロブリン療法

東京医科大学 臨床医学系 眼科学分野
兼任教授 毛塚 剛司 先生

視神経炎の原因

視神経炎(ON)は、人口10万人あたりの年間発症率が1.03人の稀な疾患で1)、視神経乳頭腫脹が観察される視神経乳頭炎と、検眼鏡的には判別できない球後視神経炎があります。ステロイド点滴治療後に一定数の再発があるとされており、治療抵抗性や重症度には、アクアポリン4(AQP4)抗体やミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク(MOG)抗体といった自己抗体の関与が示唆されています。
ONの原因の私見を図1に示します。中枢神経系、全身性自己免疫病、感染性の3つに大別され、中枢神経系に多発性硬化症(MS)、視神経脊髄炎(視神経脊髄炎スペクトラム障害:NMOSD)、MOG抗体関連ONが含まれます。このなかでMSのONが、一般的にいわれる「典型的ON」に近いと考えられます。

(図1)ONの原因(私見)

ONの原因(私見)の図ONの原因(私見)の図

提供:東京医科大学 臨床医学系 眼科学分野 兼任教授 毛塚 剛司 先生

一方、視神経腫脹にポイントを当てると、「虚血性、循環障害」「自己免疫性」「圧迫性」「中毒性、栄養障害性」「腫瘍関連」「遺伝性」「網膜症由来」などが原因として考えられます。また、視神経乳頭腫脹を「両眼性↔片眼性」、「若年に多い↔高齢に多い」の2軸で分類(図2)すると、両眼性で若年に多いものとしては先天性の要素が大きい視神経乳頭ドルーゼンやLeber遺伝性視神経症、両眼性で高齢に多いものとしては前部動脈炎性虚血性視神経症、エタンブトール視神経症などがあります。結核性、真菌性、ヘルペス性、梅毒性といった感染性のものは、比較的高齢で片眼性の視神経乳頭腫脹に多く認められます。また、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)でも視神経炎が発症することがあります。

(図2)視神経乳頭腫脹のタイプ別分類

視神経乳頭腫脹のタイプ別分類の図視神経乳頭腫脹のタイプ別分類の図

提供:東京医科大学 臨床医学系 眼科学分野 兼任教授 毛塚 剛司 先生

このようにさまざまな原因が考えられるONに対して、我々の施設では図3に示すような手順で診断を行っています。問診から始まり、細隙灯顕微鏡などの眼科検査、採血、胸部X線検査などを経て、ヘルペスなどの感染症を疑った場合には、前房水を採取してPCR検査にかけ、陽性であれば感染症科とチームを組むこともあります。一方、非感染症疑いの場合は、脳神経内科と一緒に原因を検索する必要があると思います。

(図3)自施設における診断の手順

自施設における診断の手順の図自施設における診断の手順の図

提供:東京医科大学 臨床医学系 眼科学分野 兼任教授 毛塚 剛司 先生

ONの臨床的特徴

米国では、約30年前にONの全国調査(Optic Neuritis Treatment Trial:ONTT)が行われました2)。AQP4抗体やMOG抗体が同定されていなかった頃の調査ですが、国際的に「典型的ONの調査」と位置づけられるONTTでは、ONの発症率やMSの割合、治療反応性などが示されました。日本でも約20年前にONの全国調査が行われ、冒頭に示したような年間発症率(人口10万人対1.03人)とともに、ONTTと比較してMSに由来するONが少ないこと、ステロイドパルス療法に対する治療反応性はONTTとあまり変わらないことなどが示されました1)3)4)
日本ではさらに日本神経眼科学会により、2015年から約3年にわたってONの全国調査が行われ5)6)、対象となった全531例の非感染性ONのうち、MOG抗体陽性が10.2%、AQP4抗体陽性が12.4%、両抗体陰性が77.2%を占め、両抗体陰性のなかでMSの占める割合は4%にとどまることが示されました(図4)。

(図4)日本におけるONの内訳

日本におけるONの内訳のグラフ日本におけるONの内訳のグラフ

文献5)6)を元に作図

年齢分布の特徴は、AQP4抗体陽性群は40歳代以上に多く、MOG抗体陽性群は30歳代と50歳代の二峰性を示していました。また、女性比率はAQP4抗体陽性群84%、MOG抗体陽性群51%、両抗体陰性群64%で、AQP4抗体陽性群は女性が圧倒的に多いことがわかりました。その他の臨床的特徴として、乳頭腫脹および眼球運動時痛はMOG抗体陽性群に多い、AQP4抗体陽性群では視力予後が不良で多彩な視野変化が生じる、さらにAkaishiらの報告7)ではMOG抗体陽性群は春夏に、AQP4抗体陽性群は秋冬の発症が多いことが示されました。
私自身が経験した典型的なMOG抗体関連ONは8)、急激な視力低下と眼痛を主訴に来院、視神経乳頭の発赤・腫脹やMRI T1造影で視神経高信号が認められ、ステロイドパルス療法2クール実施で治癒しましたが、1年後に反対側の眼で再発しました。このように、再発を繰り返すこともMOG抗体陽性ONによくみられる特徴です。
また、MRI所見の高信号域は、MOG抗体陽性群では筋円錐内のみが多いのに対し、AQP4抗体陽性群では筋円錐外(視神経管〜視交叉)のみが多く炎症が視交叉や視索にまで延長する可能性が示唆され、こうしたことがAQP4抗体陽性ONでは視野変化が多彩であることの原因となっていると考えられます。

COVID-19とON

COVID-19によってNMOSDが生じるという複数の症例報告があがってきています。多くの症例がMOG抗体陽性で、典型的には咳嗽・微熱が生じ、両眼の眼痛を伴う急激な視力低下、MRIで両側の視神経炎・脊髄炎が確認され、ステロイドパルス療法で治癒するという経過をたどります(表19)10)11)12)

(表1)COVID-19によって生じるONの特徴

COVID-19によって生じるONの特徴の一覧図COVID-19によって生じるONの特徴の一覧図

文献9)10)11)12)を元に作成

感染症に対してはワクチン接種が有効な予防手段となりますが、肺炎球菌(PPSV23)、ヒトパピローマウイルス(HPV4)、新型インフルエンザウイルス(H1N1)などに対するさまざまなワクチン接種がON発症のオッズ比を高めることが報告されています13)。新型コロナワクチンに関しても、ワクチン接種後に両眼性ONと甲状腺炎を発症し、ステロイドパルス療法によって寛解したという症例が報告されており14)、ONの患者さんを診察する場合には、ワクチン接種の有無と接種の時期についても問診する必要があると思います。

ONの急性期治療

ONの急性期治療としては、ステロイドパルス療法、血漿交換療法、免疫グロブリン大量静注療法(IVIG療法)があり、「多発性硬化症・視神経脊髄炎診療ガイドライン2017」15)では、急性期の中枢神経系脱髄性疾患に対しては、ステロイドパルス療法から始め、効果不十分なときは血漿浄化療法やIVIG療法に移行するという治療アルゴリズムが提示されています。
我々眼科医がどのようなタイミングでこうした治療に踏み切ることが多いかですが、矯正視力0.3未満では悪化の速度が速いため積極的な治療を実施、矯正視力0.7以上の場合には患者さんの意向を聞いた上で経過観察、矯正視力0.4~0.6の場合には脳所見などの眼外症状を考慮して、脳神経内科医と相談しながら方針を決めています。

治療の実際としては、初診時に非感染性ONを疑った場合にはAQP4抗体をELISA法で測定し、結果が出るまでの間にステロイドパルス療法を1クール実施します。ステロイドパルス療法で効果不十分の場合は、AQP4抗体の結果を待って血液浄化療法もしくはIVIG療法を考慮します。AQP4抗体が陰性の場合でも、偽陰性が疑われるケースではcell-based assay(CBA)法で測定、あるいはMOG抗体の測定などを考慮します。AQP4抗体陽性ONに対して、我々の施設では二重膜濾過血漿交換で有効な治療効果が得られることを経験しています。

急性期ONに対するIVIG療法

2019年12月、IVIG療法が「視神経炎の急性期」を効能・効果として保険収載されました。IVIG療法は短期間の入院でよい(5日間)、患者さんの身体的負担が比較的少ないなどの特徴があります。ONに対する免疫グロブリン(IVIG)の主な作用機序としては、自己抗体陽性の場合には自己抗体の代謝促進や補体活性化の抑制、T細胞の遊走抑制、自己抗体陰性の場合にはサイトカインの産生抑制、食細胞による貪食細胞による作用の抑制などが想定されています16)17)18)

  • *視神経炎に対する適応を有する免疫グロブリン製剤・献血ベニロン-Iの効能・効果は「視神経炎の急性期(ステロイド剤が効果不十分な場合)」です。

ONに対するIVIG療法の臨床試験では、ステロイド剤が効果不十分な急性期ON患者を対象に、IVIG 400mg/kg体重/日の5日間投与(IVIG群)とステロイドパルス療法(ステロイドパルス群)の比較が行われました(試験概要はこちら19)
主要評価項目である投与開始2週間後における視力(logMAR値)の変化に関しては、IVIG群のステロイドパルス群に対する優越性は検証されなかったものの(表2)、IVIG群では投与開始4週後以降、logMAR値の平均値が1.0を下回りました(図5)。また、MD値を視標とする静的視野も改善していました(図6)。

(表2)投与開始前に対する投与開始2週間後のlogMAR値の変化量(主要評価項目)19)

投与開始前に対する投与開始2週間後のlogMAR値の変化量の表投与開始前に対する投与開始2週間後のlogMAR値の変化量の表

(図5)logMAR値の平均値の推移(副次評価項目)19)

logMAR値の平均値の推移の図logMAR値の平均値の推移の図

logMAR値が1.0以下(小数視力0.1以上)への改善の意義

  • ・小数視力0.1を下回る場合は「社会的失明」と呼ばれ、字が読みにくい状態と言われています20)
  • ・身体障害者福祉法施行規則別表第5号「身体障害者障害程度等級表」において、「視力の良い方の眼の視力が0.08以上0.1以下」に該当する場合は視覚障害者4級と認定され、第1種身体障害者として、本人および介護者も旅客鉄道株式会社の旅客運賃の割引が受けられる状態です。

(図6)静的視野のMD値の変化量の推移(副次評価項目)19)

静的視野のMD値の変化量の推移の図静的視野のMD値の変化量の推移の図

IVIG製剤が投与された全例での安全性は、29例中20例(69.0%)に56件の副作用が認められ、主な副作用は頭痛が7例(24.1%)7件、白血球数減少6例(20.7%)6件、ALT増加、AST増加が各5例(17.2%)5件、肝機能検査異常、発疹、倦怠感、発熱が各2例(6.9%)2件でした。重篤な副作用は肝機能異常、食欲減退2例2件、投与を中止した副作用は肝機能異常1例、死亡例は認められませんでした。

†ステロイドパルス群では、ステロイドパルス療法実施の2週間後に、IVIG 400mg/kg体重/日×5日間の投与が行われました。

自施設におけるONに対するIVIG療法の経験
※すべての症例が同様の結果を示すわけではありません

当院(東京医科大学病院)でも、最低視力が光覚弁、手動弁といった視力不良のステロイド抵抗性ONに対してIVIG療法を実施したところ、6例中4例で最高視力が1.0以上となったことを経験しています21)。また、片眼性のAQP4抗体陽性ONの1例では、ステロイドパルス療法によっても中心暗点増悪、視力障害残存を認めたことから、発症7日目よりIVIG療法を実施。開始後すぐには視力の変化は見られませんでしたが、投与終了後(退院後)から徐々に視力が回復、病眼の視力は当初の手動弁から3ヵ月後に1.2となり、盲点中心暗点も消失したことを経験しています。このように、IVIG療法による治療では、投与直後よりはある程度の期間をかけて視力が変化していくと考えています(図7自験例①)。また、別の片眼性のAQP4抗体陽性ONの1例では、ステロイドパルス療法実施後に視野障害および視力障害の効果が限定的であったことからIVIG療法を実施したところ、病眼視力は手動弁から0.02、また全視野欠損から周辺視野は改善したものの中心暗点が残存したため、追加で血漿交換療法を行い、視野および視力の改善を得たということも経験しています(図7自験例②)。
これらのことから、ステロイドパルス療法では効果不十分ではあるものの、視野障害や視力障害に少しでも変化が認められる場合にはIVIG療法による効果が期待できる一方で、ステロイドパルス療法で全く効果が得られない場合には、IVIG療法による効果も限定的となることから、このような場合には血漿交換療法を実施する方が適切と考えています。

(図7)治療による矯正視力の変化

治療による矯正視力の変化の図治療による矯正視力の変化の図

提供:東京医科大学 臨床医学系 眼科学分野 兼任教授 毛塚 剛司 先生

急性期治療に続く維持療法ではステロイドや免疫抑制剤の内服、再発寛解期ではエクリズマブ、サトラリズマブ、イネビリズマブなどの生物製剤が選択肢となります。
当院のAQP4抗体陽性ON患者に対する治療例をご紹介すると、ステロイドパルス療法を1クール実施し、十分な効果が得られなければIVIG療法を続けて実施し、寛解後サトラリズマブを定期的に投与することで症状が落ち着いてくることが多いと思います(図8)。注意している点としては、ステロイド内服の減量はゆっくりと行い、感染症対策としてスルファメトキサゾール・トリメトプリム製剤などを投与しています。

(図8)NMOSD(AQP4抗体陽性ON)患者の治療例

NMOSD(AQP4抗体陽性ON)患者の治療例の図NMOSD(AQP4抗体陽性ON)患者の治療例の図

提供:東京医科大学 臨床医学系 眼科学分野 兼任教授 毛塚 剛司 先生

まとめ

視神経疾患は問診が非常に大切であり、なかでも視神経乳頭所見、相対的瞳孔求心路障害(RAPD:ライト照射で縮瞳するところが散瞳してしまう現象)が重要で、視神経乳頭の発赤とRAPD陽性、視力や視野所見を組み合わせて診断します。また、抗体陽性関連ONの場合には視野異常が多彩で、再発性のことが多いといわれています。
最後に、我々眼科医がONを治療する場合のプロトコールを検討してみました(図9)。特発性ONの全例でAQP4抗体を測定し、その間にステロイドパルス療法を実施します。MRI造影では視神経に沿った造影効果を認める場合を特発性ONとして扱いますが、視野検査で耳側半盲、水平半盲を認める場合にはAQP4体陽性ONが疑われるので注意が必要です。多くのケースでステロイドパルス療法が有効ですが、ステロイドパルス療法無効例に対しては、血漿交換療法やIVIG療法を考慮します。なお、MOG抗体は、本来であれば全例で測定をする方がよいですが、費用面のことを考えて再発時のみとすることが多いです。
これらの治療でも無効あるいは再発する場合には、生物製剤をうまく使っていくというように、効果を見極めながら治療を選択していくことが重要と考えます。

(図9)視神経炎(矯正視力0.3以下)の治療プロトコール(私見)

視神経炎(矯正視力0.3以下)の治療プロトコール(私見)の図視神経炎(矯正視力0.3以下)の治療プロトコール(私見)の図

座長とのディスカッション

新野先生(座長):ご視聴の先生から頂戴した質問です。「AQP4抗体陽性の脊髄炎既往がある症例で、片眼性眼痛のみの場合に再発を疑うべきでしょうか。待ってよいでしょうか」については、いかがでしょうか。
毛塚先生:ご質問の患者さんが脳神経内科で再発と診断されていれば、脊髄炎に対する治療が行われるのだと思いますが、眼科受診の場合は眼痛のみでは判断が難しいと言わざるを得ません。眼痛は、統計的にはNMOSDでは少なく、MOG抗体陽性ONで多いです。MOG抗体陽性ONであれば眼痛に対してステロイドの増量が考慮されますが、その際にも脳神経内科との連携が非常に重要だと思います。
新野先生:脳神経内科では、例えば脊髄炎で再発したケースでも、免疫抑制剤やステロイドなどの再発予防薬が入っている場合には症状が軽いことがあり、MRIでも判断が難しいことがあります。眼科ではいかがでしょうか。
毛塚先生:同じく難しいことがあります。NMOSDの場合には痛みは伴わず、視力や視野が急激に障害されることが多いのですが、MOG抗体陽性ONの場合には痛みだけで来院されるため、解熱鎮痛薬だけが処方されて、後々、視力が大きく低下してしまうこともあります。MOG抗体陽性ONの場合には、眼痛を再発の前兆と捉えてステロイドを増量するか、もしくは免疫抑制剤を増量するかということを脳神経内科と連携をとって検討していただくのがよいと思います。
新野先生:乳頭腫脹はMOGADの方がNMOSDよりも強いということですが、これはMRI所見の高信号がNMOSDでは筋円錐外に多くて、MOGADでは筋円錐内に多いということが関係しているのでしょうか。
毛塚先生:そのように考えます。明言はできませんが、MOG抗体の標的であるオリゴデンドロサイトが前方に多く発現している、また、AQP4抗体の標的であるアストロサイトが視交叉付近に多く発現しているというように、抗原の発現部位が関係しているのではないかと推測しています。
新野先生:ONで来院された患者さんに対しては、まずELISA法でAQP4抗体を測定しますが、先生のところではどのような症例にCBA法を実施しているのでしょうか。
毛塚先生:まずはステロイドパルス療法を実施し、その治療反応性をみて実施を検討しています。
新野先生:抗体検査については私自身の経験として、脊髄炎で来院してMOGADが強く疑われるケースで、血液検査ではMOG抗体が検出されず、髄液を測ってみたら陽性だったということがありました。眼科においてもONで受診された患者さんに対して、髄液で抗体を測定するようなケースはありますか。
毛塚先生:当院では全例、眼科と脳神経内科とチームを組んで診療していますが、髄液検査まで実施するのはだいたい半数です。また、脊髄炎の患者さんに関しても我々眼科が診るのですが、その理由は網膜の菲薄化の確認です。網膜はONの再発により菲薄化します。視力が良好な脊髄炎の患者さんの中には、網膜が菲薄化したMOG抗体陽性例の方が時折みかけられます。
新野先生:やはり脳神経内科と眼科との連携が非常に重要ということですね。ありがとうございました。
参考文献
1)
若倉雅登ほか. 日眼会誌. 1995; 99: 93-97.
2)
Beck RW, et al. N Engl J Med. 1992; 326: 581-588.
3)
Wakakura M, et al. Jpn J Ophthalmol. 1999; 43: 127-132.
4)
Wakakura M, et al. Jpn J Ophthalmol. 1999; 43: 133-138.
5)
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)「神経免疫学的視点による難治性視神経炎の診断基準作成」研究成果データベース https://mhlw-grants.niph.go.jp/project/26524(2022年1月閲覧)
6)
Ishikawa H, et al. Ophthalmology. 2019; 126: 1385-1398.
7)
Akaishi T, et al. J Neuroimmunol. 2020; 349: 577431.
8)
毛塚剛司. 神経眼科. 2019; 36: 153-161.
9)
Zhou S, et al. J Neuroophthalmol. 2020; 40: 398-402.
10)
de Ruijter NS, et al. Mult Scler Relat Disord. 2020; 46: 102474.
11)
Sawalha K, et al. J Investig Med High Impact Case Rep. 2020; 8: 2324709620976018.
12)
Woodhall M, et al. Front Neurol. 2020; 11: 598531.
13)
Baxter R, et al. Clin Infect Dis. 2016; 63: 79-81.
14)
Leber HM, et al. Ocul Immunol Inflamm. 2021; 1-7.
15)
日本神経学会 監修. 多発性硬化症・視神経脊髄炎診療ガイドライン2017. 医学書院, 東京, 2017.
16)
Ratelade J, et al. Exp Neurol 2014; 255: 145-153.
17)
Jacob S, et al. Curr Neuropharmacol 2009; 7: 337-342.
18)
千葉厚郎. 内科 2010; 105: 835-838.
19)
献血ベニロン-I 承認時評価資料(第Ⅲ相試験)
20)
難病情報センター「網膜色素変性症」より(http://www.nanbyou.or.jp/entry/418)[2022年2月15日閲覧]
21)
水井徹ほか. ステロイド抵抗性視神経炎に対する免疫グロブリン大量療法の検討. 第59回日本神経眼科学会総会(東京/Web).
更新コンテンツ更新コンテンツ

ページのトップへページのトップへ