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IVIG WATCH!

【視神経炎関連】
第33回日本神経免疫学会学術集会 ランチョンセミナー6
自己抗体関連視神経炎の診断と治療戦略

IVIG WATCH!

【視神経炎関連】
第33回日本神経免疫学会学術集会 ランチョンセミナー6
自己抗体関連視神経炎の診断と治療戦略

座長:関西医科大学総合医療センター 脳神経内科 診療部長 教授 近藤 誉之 先生
演者:東北大学病院 脳神経内科 講師 三須 建郎 先生

視神経炎(ON)の自己抗体としては現在のところ、抗アクアポリン4抗体(抗AQP4抗体)と抗ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク抗体(抗MOG抗体)が知られており、それぞれ病態や治療に関する知見が集積されつつあります。ONの急性期では、まずステロイドパルス療法が実施されますが、効果不十分例に対しては2019年に免疫グロブリン大量静注療法が保険適応となりました。ONの治療選択肢が広がり、的確な診断および治療選択が求められています。
本ランチョンセミナーでは、脳神経内科におけるONのエキスパートを座長と演者に迎え、診断に役立つ自己抗体関連ONの病態と治療戦略について解説いただきました。

  • *視神経炎に対する適応を有する免疫グロブリン製剤・献血ベニロン-Iの効能・効果は「視神経炎の急性期(ステロイド剤が効果不十分な場合)」です。

自己抗体関連神経炎の臨床的特徴

視神経脊髄炎(NMO)は、1894年にDevicによって提唱された概念です。発症初期に非常に強い視神経炎(ON)あるいは脊髄炎を呈し、失明に至るような強いONを繰り返し起こして、かなりADLが悪くなっていくという特徴のある疾患です1)

その多くが抗アクアポリン4抗体(抗AQP4抗体)陽性を示しますが、AQP4はアストロサイトの足突起に高度に発現しており、抗AQP4抗体が結合することでアストロサイト傷害が生じ、これが波及することで視神経や脊髄に非常に強い障害が起こると考えられています。診断は、抗AQP4抗体が陽性の場合には1つの主要臨床症候(ON、急性脊髄炎、最後野症候群など)を認める、抗AQP4抗体が陰性の場合には2つの主要臨床症候を認めることをもって行われます。
NMOと鑑別すべき疾患の一つに多発性硬化症(MS)が挙げられます(表1)。慢性進行性のMSと異なり、NMOは経過が急性で、失明や対麻痺を起こしやすく、再発に伴って階段状に重症化していくことから、いかに再発時を軽症化させ、再発予防につなげていくかが非常に重要な疾患です。その点でMSの慢性進行を抑えることとはかなり対処法が異なってきます。

(表1)NMOとMSの相違点

NMOとMSの相違点〜診断・治療選択上重要!NMOとMSの相違点〜診断・治療選択上重要!

提供:東北大学病院 脳神経内科 講師 三須 建郎 先生

光干渉断層計(OCT)検査では、MSは網膜神経線維層(RNFL)の菲薄化が一側性であるのに対し、NMOではRNFL全体の非常に強い菲薄化と軸索変性を伴った強い障害を認めます2,3)。また抗AQP4抗体陽性例では、ナルコレプシーを引き起こす両側性の視床下部病変、意識障害や高次機能障害を伴う広範な大脳白質病変、脳梁全体にわたる浮腫性病変などが特徴的です。
一方、ONの自己抗体としては、後述するように抗ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク抗体(抗MOG抗体)も知られています。大脳脚の病変は抗AQP4抗体陽性例および抗MOG抗体陽性例に共通する所見ですが、抗MOG抗体陽性例では中小脳脚の両側に病変の集積があるのに対して、抗AQP4抗体陽性例では最後野を含む脳幹の背側中央部に病変が集積しやすいことが特徴で4)、この臨床上の特徴の違いが、診断に有用と考えます。
私自身の経験としては、ELISA法で抗AQP4抗体陽性を確認したものの、症状・所見から偽陽性を疑ってCell-based Assayを行ったところ、抗AQP4抗体は陰性であることが確認され、MSの診断に至ったということもあります。抗体関連疾患では、抗体検査の結果によって診断が異なるという点に日常的に注意する必要があります。

ONの治療反応性と予後

急性期ONのファーストライン治療はステロイドパルス療法ですが、NMOを対象とした検討では、ON発症からステロイドパルス療法開始までの日数が長いほどRNFLは薄くなり、4日以降では菲薄化の改善が難しいと考えられる状態になることが示されており(図1)5)、ONでは一刻も早い治療開始が必要とされます。

(図1)NMOの視神経炎に対するOCT5)

NMOの視神経炎に対するOCTの図NMOの視神経炎に対するOCTの図

国内のON患者を対象とした疫学調査では、531例のうち12%が抗AQP4抗体陽性例、10%が抗MOG抗体陽性例、77%がいずれの抗体も陰性の特発性視神経炎(ION)であり、抗MOG抗体陽性例およびIONでは8割前後にステロイド療法が実施され、LogMAR値はそれぞれ1.6から0および1.2から0.1に改善し良好な予後が示されたのに対して、抗AQP4抗体陽性例では9割近くでステロイドパルス療法、あるいは血漿交換療法の併用が行われたものの、LogMAR値は2.6から0.4と視力の十分な改善が得られませんでした6)
NMOおよびNMOSDの871回の発作を対象としたドイツのNEMOS study7)では、大部分でステロイドパルス療法もしくは血漿交換療法が行われ、ON・脊髄炎の再発例においては約80%が効果不十分であり、うち約20%がnon responderであったこと、さらに、ONだけに限ってみると、血漿交換療法を要するような重篤例では約30%がnon responderであったことが報告されています。また、NMOの急性期における血漿交換療法の有用性の検討では8)、血漿交換療法の開始日が5日以内の場合にgood recoveryが多く、11日を超えるとpoor recoveryが増えることが示されており、これらの報告からも適切な治療を早期に行うことの重要性が伺われます。

抗MOG抗体関連疾患の概要

抗MOG抗体関連疾患は臨床的には非常に多様で、小児の多くは急性散在性脳脊髄炎(ADEM)で、10歳代後半~20歳代からONや脊髄炎を呈するようになります9)。MRI所見の特徴は、蛇行する視神経炎の描出、浮腫性病変、さらに視神経周囲炎などです。

視力に関しての予後は抗AQP4抗体陽性例に比較して良好といわれるものの、片側性ONで約4割、両側性ONでは5割超に何らかの障害が残ることが示されており9)、MOG抗体であっても油断はできません。
また、当院で初発ONに対して初回入院治療を行った抗MOG抗体陽性52例の検討では10)、75%程度がONで、その他は脊髄炎などを呈していました。急性期の治療としてはステロイドパルス療法単回、複数回、血漿交換療法などを行いますが、非再発性の84%は1年後にも後遺症がなく、多くは単回のステロイドパルス療法で改善が認められています。一方で、複数回のステロイドパルス療法および血漿交換療法を実施しても約40%に後遺症が認められたことが示され、課題となっています。

免疫グロブリン(IVIG)製剤の有用性

自己抗体関連ONに対する治療効果不十分例が課題とされるなか、2019年には急性期のONに対する治療選択肢に免疫グロブリン大量静注療法が加わりました(図2)

  • *本邦における免疫グロブリン製剤の効能・効果は「視神経炎の急性期(ステロイド剤が効果不十分な場合)」です。

(図2)ONの急性期治療と再発予防

NMOとMSの急性期治療と再発予防の表NMOとMSの急性期治療と再発予防の表

提供:東北大学病院 脳神経内科 講師 三須 建郎 先生

免疫グロブリン(IVIG)製剤のONに対する治験では、ステロイド剤が効果不十分な急性期ON患者を対象として、IVIG 400mg/kg体重/日を5日間投与した群(IVIG群)とステロイドパルス療法を行った群(ステロイドパルス群)の比較が行われました11)試験概要はこちら)。
主要評価項目である投与開始2週間後における視力(logMAR値)の変化に関しては、IVIG群のステロイドパルス群に対する優越性は検証されませんでしたが(表2)、副次評価項目の投与開始2週間後のlogMAR値が0.3以上改善した患者の割合は、IVIG群で16例中12例(75.0%)、ステロイドパルス群で16例中5例(31.3%)と、IVIG群で多いことが示されたほか(Newcombeによる95%信頼区間0.0921~0.6637;図3)、IVIG群ではlogMAR値が投与後のすべての時点で投与開始前と比較して減少したことが示されました(p<0.05、対応のあるt検定)(図4)。

IVIG製剤が投与された全例での安全性は、29例中20例(69.0%)に56件の副作用が認められ、主な副作用は頭痛が7例(24.1%)7件、白血球数減少6例(20.7%)6件、ALT増加、AST増加が各5例(17.2%)5件、肝機能検査異常、発疹、倦怠感、発熱が各2例(6.9%)2件でした。重篤な副作用は肝機能異常、食欲減退2例2件、投与を中止した副作用は肝機能異常1例、死亡例は認められませんでした。

†ステロイドパルス群では、ステロイドパルス療法実施の2週間後に、IVIG 400mg/kg体重/日×5日間の投与が行われました。

(表2)投与開始前に対する投与開始2週間後のlogMAR値の変化量(主要評価項目)11)

投与開始前に対する投与開始2週間後のlogMAR値の変化量の表投与開始前に対する投与開始2週間後のlogMAR値の変化量の表

(図3)logMAR値が投与開始から0.3以上改善した患者の割合(投与2週間後、追加解析、副次評価項目)11)

logMAR値が投与開始から0.3以上改善した患者の割合のグラフlogMAR値が投与開始から0.3以上改善した患者の割合のグラフ

(図4)logMAR値の投与開始前に対する変化量の推移(副次評価項目)11)

logMAR値の投与開始前に対する変化量の推移のグラフlogMAR値の投与開始前に対する変化量の推移のグラフ

ONの再発予防

近年、NMOの再発予防において、さまざまな治療薬、抗体医薬品(イネビリズマブ、エクリズマブ、サトラリズマブ)などが使用可能であり、医師主導治験が進行中のものもあります。抗AQP4抗体陽性例では抗体医薬品がステロイドの減量や再発の抑制に有用であったことが報告される一方12,13)、抗MOG抗体陽性例では再発が多く14)、今後、ONの再発予防におけるIVIG製剤の有用性が検討されることを期待しています。

  • *本邦における免疫グロブリン製剤の効能・効果は「視神経炎の急性期(ステロイド剤が効果不十分な場合)」です。

まとめ(表3)

NMOの治療選択肢が広がるなか、急性期治療や再発予防において、有効性、安全性を考慮した治療選択が必要とされます。急性期では、抗体検査の結果を待つ間にも、できるだけ早くステロイドパルス療法を開始します。そして、有効性が認められない場合には免疫グロブリン大量静注療法や血漿交換療法を考慮する等、状況に合わせた適切な治療を行うなど、急性期をフレキシブルに乗り越えていくことが重要です。
一方、抗MOG抗体陽性例では特に再発予防に関するエビデンスがまだ十分ではありません。今後、急性期のみならず、再発予防における治療選択肢としてIVIGの有用性が議論されていくことが望ましいと考えられます。

(表3)まとめ

まとめの図まとめの図

提供:東北大学病院 脳神経内科 講師 三須 建郎 先生

座長とのディスカッション

近藤先生(座長):単相性の病態ではステロイドを中止したほうがよいというご意見もあるようですが、我々が診療する患者さんの多くは再発性で、1~2年以上はステロイドを継続するケースが多いのが実情です。抗MOG抗体陽性例に対して、再発予防のステロイドはいつまで継続されるのでしょうか。
三須先生:抗体検査には感度の問題があるので、陰転化すれば中止してよいというものではないと思っています。半年から1年ごとに抗体検査を行って、陰性が確認されれば、再発のリスクも話をした上で患者さんと相談し、患者さんが希望されればステロイドの減量や中止を考慮する場合もありますが、再発予防のためには、ステロイドは様子を見ながら慎重に漸減することが重要だと考えています。
近藤先生:ステロイドパルス療法の効果が不十分な抗AQP4抗体陽性例に対しては、血漿交換療法が有用ですが、抗AQP4抗体陽性で症状は軽いもののステロイドパルス療法で有効性が今一つといった場合によく免疫グロブリン大量静注療法を行います。先生はどのような患者さんに免疫グロブリン大量静注療法が適しているとお考えでしょうか。
三須先生:急性期の血漿交換療法は施設の状況などによって施行が難しいこともあります。免疫グロブリン大量静注療法は比較的施行しやすいということがありますから、ステロイドパルス療法への反応性に疑問を感じた場合に実施を検討しています。また、抗体が陽性の場合などには血漿交換で抗体を減らしてから免疫グロブリン大量静注療法を行うケースもありますので、症例ごとに検討することが必要だと思います。
参考文献
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Misu T, et al. Brain. 2002; 125: 2460-2468.
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Bennett JL, et al. Mult Scler. 2015; 21: 678-688.
3)
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Matsumoto Y, et al. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2021; 92: 682-684.
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Ishikawa H, et al. Ophthalmology. 2019; 126: 1385-1398.
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Bonnan M, et al. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2018; 89: 346-351.
9)
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10)
生田目知尋. 抗MOG抗体関連疾患急性期治療後の経時的障害度と予後の検討. 第31回日本神経免疫学会学術集会(開催:2019年9月26-27日、幕張メッセ).
11)
献血ベニロン-I 承認時評価資料(第Ⅲ相試験)
12)
Kageyama T, et al. J Neurol. 2013; 260: 627-634.
13)
Tahara M, et al. Lancet Neurol. 2020; 19: 298-306.
14)
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