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IVIG WATCH!

【川崎病関連】川崎病の原因はどこまで解明されたか、また、IVIG療法の実際について

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【川崎病関連】
川崎病の原因はどこまで解明されたか、また、IVIG療法の実際について

川崎病の原因・病態とIVIG療法

解説:福岡市立こども病院 院長 原 寿郎 先生

川崎病は発熱と発疹、リンパ節腫大などが主要な症状であり、後遺症として冠動脈瘤を残すことがあります。先進国で最も頻度の高い小児の後天性心疾患であり、日本では1年間に約1万6000人の児童が発症しています。
1967年に川崎病が初めて報告されてから、感染因子や自己免疫因子などの関与が長らく議論されてきましたが、病因は依然として不明のままであり、有効な治療法・予防法を確立するためにも病態解明が切望されています。
福岡市立こども病院 院長の原 寿郎先生は、九州大学在任中から川崎病の病因・病態への自然免疫の関与を動物実験や臨床研究で明らかにされてこられました。また、日本初の川崎病センターを2015年オープンされ、現在年間入院患者数は日本最多となっています。川崎病の基礎的・臨床的研究をされてこられた原 寿郎先生に川崎病の病因と病態、そしてIVIG療法について解説していただきました。

現在も依然として不明な川崎病の病因

川崎病は最初の報告から半世紀が経った現在もいまだに原因不明の疾患です。川崎病の特徴として季節性を有し、流行や地域集積性があること、患者は乳幼児が多く、5歳未満児が大半を占めることなどから、その病因として細菌、ウイルス、真菌などの感染因子の関与が考えられてきました。
しかし、ヒトからヒトへの感染がないこと、川崎病の発症に民族による差異があることなどから、非感染因子・遺伝因子の関与も推定されてきました。
これらのことから、現在、川崎病は何らかの感染・環境因子を契機として過剰な免疫応答が出現し、遺伝因子を有する児に血管炎を起こす疾患と考えられています1)
以下、川崎病の病因・病態について自然免疫系の関与を中心に解説します。

PAMPsがDAMPs放出の誘因となり、両者が自然免疫機構を活性化し冠動脈炎を惹起

近年、微生物および微生物由来物質、異常代謝産物(痛風の原因となるプリン体など)、壊死組織による自然免疫系を介した炎症のメカニズムが明らかになってきました。
ヒトが細菌やウイルスなどの病原微生物に感染すると、微生物の核酸やタンパク質などの「病原体関連分子パターン」(pathogen-associated molecular patterns: PAMPs)(表)2)が放出され、サイトカインや先天的な免疫に関連するタンパクの産生が起こります(図中の①)。

川崎病は感染症そのものではなく、微生物が口腔・気道・消化管微生物叢(バイオフィルムなど)に侵入し、ある条件下(ウイルス感染など)でPAMPsを産生するために惹起される疾患と推測しています。我々は液体クロマトグラフィー質量分析法(LC-MS)を用いて患者血清中に「川崎病特異的物質」を同定し、少なくともその一部はPAMPsであることを報告しています。川崎病に特異的なPAMPsの中にはエルシニア感染症を引き起こすYersinia pseudotuberculosisのバイオフィルムと共通構造を持っているものがありました2)。バイオフィルムであれば免疫調節薬が奏効する可能性もあり、現在、いくつかの検討が行われています。

このPAMPsが宿主であるヒト細胞に作用することで、単球、好中球、血管内皮細胞などからストレス誘導タンパク質や炎症関連タンパク質などの「ダメージ関連分子パターン」(damage-associated molecular patterns: DAMPs)が分泌されます(図中の②)。川崎病においてはHigh Mobility Group Box protein 1(HMGB1)3)やS100タンパク質4,5)などのDAMPsが分泌されていることが知られています。HMGB1やS100タンパク質などのDAMPsの血中濃度も川崎病急性期の全身の血管炎の重症度やIVIG療法に対する反応性を検討するうえで有用なマーカーとなる可能性があります。

DAMPsはサイトカインとして働き、炎症と深く関係しています。損傷・壊死した細胞から放出されたDAMPsは「自然免疫パターン認識受容体」(pattern recognition receptors: PRRs)によって認識されることで、免疫細胞が動員され、自然免疫機構が活性化されます(図中の③および④)。

炎症所見や冠動脈病変と関連する川崎病特異的分子がそれぞれ見いだされており、冠動脈異常と関連する2つの川崎病特異的分子の構造は動脈硬化の発症に関連する分子と共通のものでした。川崎病による冠動脈異常と関連する特異的分子は動脈硬化の重要な役割を果たすことが知られており、川崎病罹患後の持続血管内皮細胞障害や成人後の動脈硬化発症を説明できる可能性があります。

これらのことから、川崎病では、環境と微生物との相互作用により産生された微生物由来の病原体関連分子パターンであるPAMPsと、PAMPsが宿主に作用することによって産生されたDAMPsの両方が自然免疫系のPRRsを介して自然免疫機構と血管構成細胞を活性化させて冠動脈炎を惹起すると考えられます(図中の⑤)1)

引用文献
1)
Hara T, et al. Clin Exp Immunol 2016;186: 134.
2)
Kusuda T, et al. PLoS One 2014; 9: e113054.
3)
Hoshina T, et al. Scand J Rheumatol 2008; 37: 445-449.
4)
Foell D, et al. Lancet 2003; 361: 1270-1272.
5)
Ye F, et al. Am J Cardiol 2004; 94: 840-844.

図1:自然免疫機構を介する川崎病の発症機構(仮説)(原寿郎先生の概念図を基に作図)

図1:自然免疫機構を介する川崎病の発症機構(仮説)(原寿郎先生の概念図を基に作図) 図1:自然免疫機構を介する川崎病の発症機構(仮説)(原寿郎先生の概念図を基に作図)

表:病原体関連分子パターン(PAMPs)とダメージ関連分子パターン(DAMPs)

表:病原体関連分子パターン(PAMPs)とダメージ関連分子パターン(DAMPs) 表:病原体関連分子パターン(PAMPs)とダメージ関連分子パターン(DAMPs)

川崎病治療におけるIVIG療法の実際

解説:福岡市立こども病院 総合診療科/川崎病センター 古野 憲司 先生

福岡市立こども病院 総合診療科/川崎病センターの古野憲司先生に、川崎病の早期診断、免疫グロブリン静注療法(IVIG)についてご説明いただきました。

容易ではない川崎病の鑑別診断

川崎病の治療目標は、早期に炎症を終息させ患者の予後を規定する心後遺症(冠動脈病変)を残さないことです。基本治療は免疫グロブリン静注療法(IVIG)+アスピリン内服であり、第24回川崎病全国調査(調査期間2015~2016年)では9割以上に初回治療としてIVIGが行われていました1)
心後遺症を残さないためには早期診断を行ってIVIGのタイミングを逃さないことが重要です。しかし、実際には数%程度の患者さんで巨大瘤、瘤、冠動脈の拡大、冠動脈の狭窄、心筋梗塞、弁膜症などの心後遺症を残しており、多くはないのですが巨大瘤(0.13%程度)1)の場合は特に、生涯にわたって突然死のリスクを抱えることになってしまいます。

『川崎病診断の手引き』2)は川崎病の主要症状として

  • 発熱(ただし、治療により5日未満で解熱した場合も含む)
  • 両側眼球結膜の充血
  • 口唇の紅潮、いちご舌、口腔咽頭粘膜のびまん性発赤
  • 不定形発疹
  • 四肢末端の変化(急性期:手足の硬性浮腫、掌蹠ないし指趾先端の紅斑 / 回復期:指先からの膜様落屑)
  • 急性期における非化膿性頸部リンパ節腫脹

を挙げており、①~⑥のうち5つ以上が合致していれば川崎病としています。しかし、5つの症状が認められなくても、経過観察中に断層心エコー法もしくは心血管造影法で冠動脈瘤(冠動脈の拡大を含む)が確認され、他の疾患が除外されれば川崎病と診断されます。
実際には川崎病の鑑別診断は難しく、『診断の手引き』の基準は満たさないものの、他の疾患が否定されたことで川崎病が疑われる「川崎病不全型」が多いのも実情です1)
症状が揃わないために川崎病と判断できず、発熱から10日以上経過してはじめて行った心エコー検査で冠動脈病変が認められたことで川崎病と診断された例などもあります。不全型であっても冠動脈障害が少ないということはないので、川崎病を念頭において鑑別診断をすることが重要となります。

病日などによりIVIG治療方針を変更する

我々は治療開始病日などでIVIG治療方針を設けています。「8病日以内には解熱させたい」との考えのもとに治療を行っています。

6病日以前では、IVIG製剤を急性期治療のガイドラインの「おおむね12~24時間かけて」に合わせて20時間以上かけて投与し、不応予測群3~5)である場合はプレドニン(2mg/kg)の併用を考慮します。
7病日以降に投与する場合は、8病日以内の解熱を目指すために10~12時間で投与出来る製剤を使用します。

*AHAガイドライン6)より、有効性の根拠と安全性が確立している投与速度でもあり、これまでの日本における使用実績から

その他に、我々の施設では血管漏洩による皮膚潰瘍のリスクを考えて注射部位が見えるようにし、定期的にチェックをしています。夜間はチェックが遅れる可能性があるため、特に留意しています。
また、低ナトリウム血症を呈する患者さんに冠動脈病変の合併の割合が高いことが報告7)されていることから、常に血清ナトリウム値管理を行い、低ナトリウム血症発現リスクの低減を心掛けています。

初回IVIG不応例は、第24回川崎病全国調査では17.8%1)、当院調査でも24.8%でした。
IVIG不応予測例においては「IVIG不応と予測される重症例では始めから強力な治療(免疫グロブリン超大量療法+プレドニゾロン療法)を」との考えから、治療開始病日、AST値、CRP値、血小板数などをスコア化してIVIG不応例を予測して治療方針を決定する検討がいくつか行われています。
現在、代表的なものとして群馬大学、久留米大学、大阪川崎病研究グループの予測モデルがあり、不応リスクスコアが高くなければ(たとえば群馬スコアで4点以下であれば)IVIGが奏効すると予想されることで、治療方針も立てやすくなり、患者さんやご家族への説明もしやすくなります。
病態に応じて血漿交換やインフリキシマブの投与の検討も行います。

参考文献
1)
日本川崎病研究センター. 第24回川崎病全国調査.
http://www.jichi.ac.jp/dph/kawasakibyou/20170928/mcls24report.pdf
2)
厚生労働省川崎病研究班作成改訂.
川崎病(MCLS、小児急性熱性皮膚粘膜リンパ節症候群)診断の手引き(第5版). 2002年.
http://www.jskd.jp/info/tebiki.html
3)
小林徹ら: 川崎病急性期治療の進歩、循環器内科2011;69:324-329.
4)
Egami k et al.: J pediatr 2006;149:237-240.
5)
Sano T et al.: Eur J pediatr 2007;166:131-137.
6)
McCrindle et al,:Circulation 2017;135:e927–e999.
7)
Suzuki H.,et al.: Eur J Pediatr 2003;162:856.
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