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IVIG WATCH!

関西医科大学小児科学教室 金子一成先生 解説
【川崎病関連】川崎病における低ナトリウム血症とナトリウム含量を考慮した免疫グロブリン製剤の選択について

IVIG WATCH!

関西医科大学小児科学教室 金子一成先生 解説
【川崎病関連】川崎病における低ナトリウム血症とナトリウム含量を考慮した免疫グロブリン製剤の選択について

急性期の川崎病の小児では低ナトリウム血症が高頻度に合併することが報告されており、予後に与える影響が懸念されています。川崎病における低ナトリウム血症の疫学や病因、そしてその意義や低ナトリウム血症を考慮した治療の重要性について、関西医科大学小児科学教室 金子 一成 先生にご解説いただきました。

金子 一成 先生金子 一成 先生
【解説】
関西医科大学小児科学教室 主任教授
金子 一成 先生

 

医原性低ナトリウム血症

医原性低ナトリウム血症は、日常診療で遭遇することが多く、重篤な中枢神経症状を引き起こす電解質異常として注意が必要です。急性疾患の小児患者の多くは血漿浸透圧に見合わない不適切な抗利尿ホルモンの過剰分泌を伴う、いわゆる抗利尿ホルモン不適切症候群(syndrome of inappropriate secretion of antidiuretic hormone:SIADH)の傾向にあり、こうした病的状態の小児に対して、健康な小児での検討で得られた水分およびナトリウム(Na)所要量を維持輸液として投与することが主な原因と考えられます1)。実際、医原性低ナトリウム血症のリスクに関するメタ解析では、Na濃度の低い低張液による維持輸液は血清Na濃度に近いNa濃度の等張液に比較して発生リスクが約17倍高くなることが示されています2)。そういった事実にもとづいて欧米では維持輸液の組成として生食(Na154mEq/L)が推奨されていますが、その安全性に関するエビデンスは十分とは言えません。われわれは、医原性低ナトリウム血症を防ぐための維持輸液療法においては2号液(Na84mEq/L)でも十分に有用であることを報告しています3)。小児科領域で維持輸液を行うことの多い肺炎4)、熱性けいれん5)、川崎病6)などの小児のCommon diseaseで、高率(約40~50%)に低ナトリウム血症を認めることが報告されています。疾患を問わず低ナトリウム血症、とくに医原性低ナトリウム血症を合併すると致死率が高まるため、極力、予防すべき病態と考えられます。

川崎病に高率に合併する低ナトリウム血症

川崎病に低ナトリウム血症が高率に合併することは、1982年にLaxerらによって報告され、その後、日本における検討でも明らかにされてきました。これらの報告では川崎病患者の約半数が血清Na値135mEq/L未満の低ナトリウム血症を合併し、このうち約9.8%~33.3%は130mEq/L未満にまで血清Na値が低下しています7~9)
川崎病における低ナトリウム血症の原因はいまだ明確にされていませんが、表1のような病態が考えられています。すなわち、川崎病の主病態をなす炎症や発熱によって起こる抗利尿ホルモンの過剰分泌や腎尿細管からの尿中へのナトリウムの過剰喪失、あるいは低張性脱水などが関連していると考えられています(表1)。

(表1)川崎病急性期に見られる低ナトリウム血症の原因と考えられる病態

(表1)川崎病急性期に見られる低ナトリウム血症の原因と考えられる病態(表1)医原性低ナトリウム血症の原因と考えられている病態

川崎病と低ナトリウム血症の関連

川崎病に低ナトリウム血症(Na<135mEq/L)を合併した症例と、Na≧135mEq/Lの症例との比較では、低ナトリウム血症群において脱水の合併が高率で、冠動脈病変の発生リスクが高いことが示されています(表2)。
また、低ナトリウム血症に起因する脳浮腫および脳圧亢進は不可逆的な神経学的後遺症を引き起こすことも指摘されており、低ナトリウム血症は川崎病の予後に大きな影響を与える可能性が示唆されます。

(表2)低ナトリウム血症例での臨床症状、検査値9)

(表2)低ナトリウム血症例での臨床症状、検査値9)(表2)低ナトリウム血症例での臨床症状、検査値9)

t-test, Fisher exact test
*:統計的有意差あり

【目   的】
低ナトリウム血症を伴う川崎病患者の臨床的特徴、低ナトリウム血症に関わる因子を特定すること

【対   象】
1996年~2005年に入院した川崎病患者114例を対象とした後方視的検討

【方   法】
低ナトリウム血症合併患者 51例(44.7%)と低ナトリウム血症を合併していない63例(55.3%)の
臨床的特徴を比較
低ナトリウム血症:<135mEq/L

IVIG製剤のNa含量と血清Na値の関連

川崎病急性期において治療の主軸となる免疫グロブリン(IVIG)製剤のNa含量は、血漿浸透圧と比較してかなり低いものもあれば、ほぼ同等のものもあり、種類によって大きく異なります。われわれは、入院患児に広く認められる医原性低ナトリウム血症が、低張性輸液を原因としていることに着想を得て、静脈内投与であるIVIG製剤中のNa含量が血清Na値に影響を与えるのではないかと考えました。
そこで、川崎病患児78例を対象として、Na濃度が高いIVIG製剤を投与した群とNaをほとんど含まないIVIG製剤を投与した群の血清Na値をIVIG投与前後で比較したところ、投与前の血清Na値には両群間で差が認められなかったものの、投与後にはNaをほとんど含まないIVIG製剤を投与した群で血清Na値が有意に低値を示すことが明らかになりました(表3)。一方、Na濃度が高いIVIG製剤を投与した群では投与後に有意な血清Na値の上昇が認められました(図1)。

(表3)Na濃度の異なるIVIG製剤を投与された川崎病患者の比較

(表3)Na濃度の異なるIVIG製剤を投与された川崎病患者の比較(表3)Na濃度の異なるIVIG製剤を投与された川崎病患者の比較

注1)中等度:内径3~4mm、注2)一過性:1カ月以内に回復した症例
中央値[範囲]、Wilcoxon t test

(図1)IVIG投与前後の血清ナトリウム値6)

(図1)IVIG投与前後の血清ナトリウム値(文献7より転載)(図1)IVIG投与前後の血清ナトリウム値(文献7より転載)

【方法と対象】
2005年12月から2008年6月に関西医科大学および関連病院の小児科を受診し、川崎病と診断された78例をカルテに基づいて2群に分け、患者背景、経過、血清Na値、その他臨床検査値を後ろ向きに検討した。
Na濃度が高いIVIG投与群:154mEq/LのNaを含むIVIG(乾燥スルホ化人免疫グロブリン、乾燥ポリエチレングリコール処理人免疫グロブリン)を投与された48例
Naをほとんど含まないIVIG投与群:0.09-2.60mEq/LのNaを含むIVIG(pH4処理酸性人免疫グロブリン、もしくはポリエチレングリコール処理人免疫グロブリン)を投与された30例

低ナトリウム血症への対応の必要性

川崎病に合併する低ナトリウム血症に関しては、積極的に治療すべき病態か否か、また低ナトリウム血症の改善が川崎病の予後に好影響を与えるか否かなど、いまだ明らかにされていません。しかし、われわれが行ったNa含量の異なるIVIG製剤での検討結果6)や診療経験からは、①低ナトリウム血症はIVIG不応など、予後不良の予測因子であり、慎重な経過観察が必要である②低ナトリウム血症を助長するような投薬は回避すべきであり、血清Na値が低い症例ではNa濃度が高いIVIG製剤の選択といった配慮が必要ということが示唆されるとともに、③IVIG投与後の低ナトリウム血症に対しては、原因の究明と速やかな解消が必要と考えています。

低ナトリウム血症に配慮した診療のポイントとは(図2)

考え方の基本は、IVIG製剤投与前の血清Na値が135mEq/L未満の場合には低ナトリウム血症を助長しないようにNa濃度が高いIVIG製剤を選択すること、そしてIVIG製剤投与後の低ナトリウム血症に対しては、正常化するまで12時間ごとに血清Na値をチェックするとともに、尿中Na値、血清・尿浸透圧を測定しつつ低ナトリウム血症の原因を探り、それぞれの原因に応じた治療を速やかに行うことです。
より安全に川崎病治療を行う上では、常に低ナトリウム血症の可能性を念頭において薬剤を選択していくことが重要だと思います。

(図2)血清ナトリウム値に着目した川崎病の診療チャート

監修:関西医科大学小児科学教室 金子 一成 先生

参考文献
1)
Moritz ML, et al. Nat Clin Pract Nephrol 2007; 3: 374-382.
2)
Choong K, et al. Arch Dis Child 2006; 91: 828-835.
3)
Kaneko K, et al. Open Journal of Pediatrics 2012; 2: 138-142.
4)
Don M, et al. Pediatr Nephrol. 2008;23:2247-2253.
5)
Hugen CA et al. Eur J Pediatr. 1995; 154:403.
6)
Kaneko K, et al. Eur J Pediatr 2010; 169: 957-960.
7)
Laxer RM, et al. Pediatrics 1982; 70: 655.
8)
中林佳信ら. 日児腎誌 2008; 15: 83-87.
9)
Watanabe T, et al. Pediatr Nephrol 2006; 21: 778-881.
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