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IVIG WATCH!

茂呂寛先生解説
【感染症領域】(1→3)-β-D-グルカンの概要と臨床における位置づけ

IVIG WATCH!

【感染症領域】茂呂寛先生解説
(1→3)-β-D-グルカンの概要と臨床における位置づけ

深在性真菌症のスクリーニングを目的とした(1→3)-β-D-グルカン測定とIVIG製剤の影響

深在性真菌症は免疫能低下を背景に発症し、重篤な転帰をたどる症例が少なくないことから、早期からの適切な対応が求められる病態です。深在性真菌症の早期診断を目的に、補助的診断法として血中(1→3)-β-D-グルカン測定が頻用されますが、その結果はさまざまな要因により影響を受けることが知られています。
そこで、IVIG製剤がβ-D-グルカン測定結果に及ぼす影響について、新潟大学医歯学総合病院 感染管理部 茂呂 寛 先生に調査結果を解説していただきました。

新潟大学医歯学総合病院 感染管理部
茂呂 寛 先生

 

深在性真菌症の診断

真菌は病原性が低く、宿主の側の免疫能低下を背景としていることから、治療の遅れが予後に重大な影響を及ぼす可能性があり、早期診断が極めて重要となります。診断にあたり、直接的な菌体の証明が望まれる一方で、全身状態が不良な場面では侵襲の大きな検査は行いにくく、また培養検査の感度も比較的低いことから、種々の血清学的検査による補助診断法が活用されてきました。

β-D-グルカンによる深在性真菌症の補助診断

(1→3)-β-D-グルカン(以下β-D-グルカン)は真菌の細胞壁の構成要素である多糖類の一種であり、その血中濃度の測定は深在性真菌症の補助的診断法として頻用されています。測定法はβ-D-グルカンとカブトガニ由来の血液を混和すると凝固する「リムルス反応」を応用したもので、わが国で開発された経緯があります1)。β-D-グルカンは特定の菌種に限定して存在しているわけではないため、原因となる真菌の菌種を特定することはできませんが、深在性真菌症において一定の感度と特異度を示し2)、臨床の現場でも頻用されています3)

β-D-グルカン測定における注意点

β-D-グルカンの測定結果は、種々の要因により影響を受け、偽陽性が生じることがあるため、臨床像との比較を含め、結果の解釈には注意が必要です。偽陽性の原因としては、アルブミン製剤や静注用免疫グロブリン(IVIG)製剤をはじめとした血漿分画製剤使用、手術時のガーゼなど環境中のグルカンによる汚染、測定の際の振動などで生じる誤差、溶血検体や高グロブリン血症による非特異的反応の出現などが知られています3)(表1)。

(表1)β-D-グルカン測定における偽陽性の原因(文献3-5より作成)

β-D-グルカン測定における偽陽性の原因β-D-グルカン測定における偽陽性の原因

静注用免疫グロブリン(IVIG)製剤の種類によるβ-D-グルカン含有量の差異

IVIG製剤は、種々の細菌や毒素、ウイルスに対する特異抗体を含有し、血中の免疫グロブリン低下や欠損、重症感染症に対する免疫グロブリンの補充療法などに臨床応用されています。一方、前述のとおりIVIG製剤の使用はβ-D-グルカン測定の結果に影響を及ぼすことが以前より知られていましたが、その詳細については、明らかではありませんでした。そこで今回私たちは、IVIG製剤がβ-D-グルカンの測定結果にどの程度影響を与えるかについて検討しました6)。まず、国内で使用可能な7種類のIVIG製剤を対象に、3ロットずつ、含有されるβ-D-グルカン濃度を測定しました。測定にあたり、試薬としてファンギテックGテストMKII「ニッスイ」(以下MKII法、カットオフ値20pg/mL)を用いました。その結果、すべてのIVIG製剤からβ-D-グルカンが検出されましたが、その含有量は製剤ごとに大きく異なっていました(図1)。IVIG製剤は、他の血漿分画製剤と同様に、静脈内への投与を可能にするとともに、病原体や有害成分の除去など、製剤ごとにさまざまな処理過程を踏む必要があり、この過程でβ-D-グルカンが混入するものと推定されています6)。今回の結果で、各製剤のβ-D-グルカン含有量はロットごとに大きな違いはなく、同一製剤内ではおおむね共通の値であったことから、やはり製造過程によるβ-D-グルカンの混入が推定されました。乾燥スルホ化人免疫グロブリンは11.2±5.0pg/mL(MKII法)という結果で、IVIG製剤の中で最も低い値でした。

(図1)IVIG製剤に含有されるβ-D-グルカン量(MKII法)(茂呂寛先生 ご提供)

茂呂寛先生 ご提供茂呂寛先生 ご提供

IVIG製剤使用時のβ-D-グルカン偽陽性

当施設で2年間にIVIG製剤使用の前後でβ-D-グルカンが測定されている成人例を対象に、IVIG製剤投与によるβ-D-グルカン測定結果(MK法、MKII法)の推移を確認しました。IVIG投与前にすでにβ-D-グルカンと測定された症例、深在性真菌症と診断が確定した症例、アルブミン製剤の使用などβ-D-グルカン測定結果に影響を及ぼす他の要因を持つ症例を除外した結果、51例が抽出され、年齢の中央値は64歳で、男性が31例(60.8%)を占めていました。その結果、β-D-グルカン値はIVIG製剤の投与後、最大で80pg/mL上昇し(図2)、5例(9.8%)がIVIG製剤投与後にβ-D-グルカン偽陽性を呈していました(表2)。また、IVIG製剤使用時のβ-D-グルカン測定キットの性能を評価したところ、感度100%、特異度90.2%と一定の水準を示した一方、アルブミン製剤を併用されていた17例を追加した検討では、陽性予測値は25.0%と、既報告2)に比べて低い結果となりました。このため、IVIG製剤使用時のβ-D-グルカン測定結果は、偽陽性となる頻度が高いことになり、測定結果の解釈にあたり注意が必要です。

(図2)IVIG製剤使用前後でのβ-D-グルカン測定値(文献6より転載)

IVIG製剤使用前後でのβ-Dグルカン測定値(文献6より転載)IVIG製剤使用前後でのβ-Dグルカン測定値(文献6より転載)

(表2)IVIG製剤投与後に偽陽性を呈した症例の特徴(文献6より引用改変)

(表2)IVIG製剤投与後に偽陽性を呈した症例の特徴(文献6より転載)(表2)IVIG製剤投与後に偽陽性を呈した症例の特徴(文献6より転載)

β-D-グルカン測定を適切に活用するための薬剤選択

本研究でβ-D-グルカンの含有量が最多(300pg/mL)であったIVIG製剤を5g(100mL)投与した場合、30,000pgのβ-D-グルカンが血液中に混入し、血漿量を2,500mLと推定すると、β-D-グルカンは12 pg/mL上昇することになります。生体内でのβ-グルカンの動態については、依然として不明な点が多く残されていますが、今回の調査でも、IVIG製剤が投与されてから数ヵ月にわたりβ-D-グルカンが高値であった症例が確認されており、測定結果への影響が蓄積、残存する可能性が示唆されています。IVIG製剤の中に含まれるβ-D-グルカンは生体に必ずしも悪影響のあるものではありませんが、β-D-グルカンの偽陽性が、その後の治療方針に影響を及ぼす可能性も十分に考えられ、例として本来不必要な抗真菌薬が追加投与されるような事態は、安全性および医療経済の面からも、望ましいものではありません。こうした事態を避けるためにも、深在性真菌症が関与するような病態でIVIG製剤を用いる場合、製造過程や夾雑物の多寡、ひいては検査結果に及ぼす影響を意識して使用薬を選択すべき、という視点も考えられます。

参考文献
1)
Obayashi T, et al. Lancet. 1995; 345: 17-20.
2)
茂呂 寛ら,感染症誌 2003;77:227-234
3)
深在性真菌症のガイドライン作成委員会編集, 「深在性真菌症の診断・治療ガイドライン2014」, 協和企画(東京), 2014
4)
Mennink-Kersten MA,et al. Clin Infect Dis. 2008; 46: 1930-1.
5)
Marty FM, et al. Med Mycol. 2009; 47: S233-40.
6)
茂呂 寛ら, 感染症誌 2017; 91: 1-6.
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