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IVIG WATCH!

【感染症領域】 足立壯一先生インタビュー
多剤耐性菌に対する好中球貪食殺菌能増強効果について

IVIG WATCH!

【感染症領域】 足立壯一先生インタビュー
多剤耐性菌に対する好中球貪食殺菌能増強効果について

免疫グロブリン製剤の感染症(多剤耐性菌)に対する作用機序について
~IVIGは好中球のオートファジーを促進する~

重症化した感染症では、静注用免疫グロブリン製剤と抗菌薬の併用療法が行われてきました。しかし、その詳細な作用機序については明らかにされていません。そこで、京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻 足立 壯一 先生に、免疫グロブリン製剤の多剤耐性菌に対する好中球貪食殺菌能増強効果について、オートファジー促進作用を中心に伺いました。

本研究は伊藤洋志助教(現;長浜バイオ大学准教授)、松尾英将君(京都大学医学部附属病院検査部、後期博士課程在学中)が中心となって行った研究です。今回の実験で、IVIG製剤による多剤耐性菌に対する貪食刺激誘導性オートファジー効果の増強が明らかになりました。また、オートファジー機構は活性酸素依存的であり、好中球の貪食殺菌機構に関与する可能性も見出すことができました。今後、好中球におけるオートファジーの詳細なメカニズムや機能を明らかにすることで、多剤耐性菌感染症の新規治療法開発につながることが期待されます。京都大学大学院胃癌研究科血液・腫瘍内科学移植責任医師の近藤忠一先生、京都大学医学部附属病院検査部の樋口武史先生、志賀修一先生の、ご協力に深謝いたします。

京都大学大学院医学研究科 人間健康科学系専攻 足立 壯一 先生
京都大学大学院医学研究科 人間健康科学系専攻 足立 壯一 先生
京都大学大学院医学研究科
人間健康科学系専攻
足立 壯一 先生

 

感染症に対するIVIGの作用機序についてどのようにお考えですか?

IVIGの作用機序には溶菌作用、毒素中和作用、抗菌薬の感受性亢進作用、オプソニン作用などがあるとされています。IVIGは様々な細菌、細菌産生毒素に対する抗体を含んでいるので、IVIGによる抗菌活性の基礎となるメカニズムには溶菌作用、毒素の中和作用が考えられます。しかし、抗生物質の感受性の亢進、好中球によるオプソニン作用を高める機能に関してはまだ明確になっていないのが現状です。
細菌感染に対する一次宿主防御において中心的な役割を果たすのは好中球です。そのため好中球数の減少または機能が低下している免疫不全状態の患者さんは、感染症が重症化することがあります。特に多剤耐性菌による感染症の場合、多くの抗生物質は薬剤耐性菌に対して効果はありませんが、好中球を含む宿主防御は、薬剤感受性の有無に関係なく、細菌に対して活性があります。したがって、抗生物質およびIVIGにより治療される重度の感染症患者における治療成果は、増強した好中球の殺菌作用の結果と考えられます。

IVIGの好中球への作用とは具体的にはどのような作用でしょうか?

我々の研究によると、IVIGにより活性化した好中球はファゴサイトーシス、O2-放出、MPO放出およびNETs形成、オートファジーによる殺菌作用を高めることが示されています。

オートファジーについて教えてください。

オートファジーは細胞内の器官を隔離膜が取り込みオートファゴソームを形成し、ここにリソソームが結合し、細胞内の器官と融合して内容物を分解します。autoが自己、phagyが貪食、つまり危機状態になったときに、そのままでは死滅するため、自分の細胞を貪食して栄養源にして生き延びようという現象で、東京工業大学栄誉教授である大隅良典先生がノーベル医学・生理学賞を受賞されたことで、今、非常に注目されています(図1)。

図1 オートファジー

オートファジーオートファジー

足立壯一先生 ご提供

元々は飢餓状態になったときの寿命の延長に関与すると考えられてきましたが、最近では発生や分化、低酸素状態におけるストレス時の細胞のサバイバル、さらには抗原提示にも関係するなど非常に多くの報告があります。疾患との関わりについても明らかになってきており、例えば生活習慣病である糖尿病や動脈硬化、また腎症や心不全、各種の炎症性腸疾患のクローン病などにも関与していますし、神経変性疾患、発がんなどにも関与しています。

IVIGによる好中球のオートファジー誘導効果についてお聞かせください。

薬剤耐性菌株(E. coli;P. aeruginosa)の存在下での好中球のオートファジー誘導に対するIVIGの効果を調査するため、IVIG製剤1mg/mLを添加し培養を行いました。まず、イムノブロット分析による結果ですが、細菌およびIVIGの非存在下では、LC3B-Iが優勢でした(図2)。この結果は、オートファジーの誘導がほとんどないことを示しています。そして細菌のみを加えた場合、LC3B-IIレベルはLC3B-Iレベルより若干高くなり、IVIGの存在下では、LC3B-IIが優勢となりました。これらの結果は、IVIGが細菌に刺激された好中球におけるオートファジーのレベルを高めることを示しています。LC3B:オートファゴソームマーカーであり、LC3B-IからIIへの変換はオートファジーの増強を示す。

図2 貪食刺激好中球のオートファジー誘導に対するIVIG製剤の効果(1)

貪食刺激好中球のオートファジー誘導に対するIVIG製剤の効果(1)貪食刺激好中球のオートファジー誘導に対するIVIG製剤の効果(1)

Itoh H, Adachi S, et al. J Leuk Biol 2015, 98: 107-17

次にIVIGにより誘導されたオートファジーをより詳細に調査するため、免疫蛍光染色によりLC3B凝集の測定を行いました。これによりオートファゴソームの形成を見ることができます。その結果、細菌の非存在下では、LC3B凝集体はほとんど検出できませんでしたが、細菌の存在下では、LC3B凝集体および細菌が細胞質中で観察され、IVIG+細菌の存在下では、LC3B凝集体形成および好中球の細胞質内に存在する細菌数の著しい増加が観測されました(図3)。この結果からも、IVIGは好中球によるオートファジーを誘導することが確認されました。

図3 貪食刺激好中球のオートファジー誘導に対するIVIG製剤の効果(2)

貪食刺激好中球のオートファジー誘導に対するIVIG製剤の効果(2)貪食刺激好中球のオートファジー誘導に対するIVIG製剤の効果(2)

Itoh H, Adachi S, et al. J Leuk Biol 2015, 98: 107-17

透過型電子顕微鏡による評価では、多数の細菌が好中球の細胞質中で観測され、その中にオートファゴソームに特徴的な2重膜により内包された細菌も観測されました(図4A)。また、好中球の細胞小器官を含むオートファゴソームも観測されたことから、オートファジーとゼノファジー(病原菌の排除)が同時に起こっていることもわかりました。また、好中球中のオートファゴソーム数を観測したところ、IVIG存在下でその数が有意に多いことがわかりました(図4B)。IVIGの非存在下では好中球によるこれらの増強作用は観測されていないことから、IVIGは多剤耐性菌により活性化された好中球のオートファジー作用を増強すると考えられます。

図4 貪食刺激好中球のオートファジー誘導に対するIVIG製剤の効果(3)

貪食刺激好中球のオートファジー誘導に対するIVIG製剤の効果(3)貪食刺激好中球のオートファジー誘導に対するIVIG製剤の効果(3)

Itoh H, Adachi S, et al. J Leuk Biol 2015, 98: 107-17

好中球のオートファジー機構にはどのような作用があるのでしょうか?

好中球の殺菌におけるオートファジーの役割を調べるために、オートファジー阻害剤(バフィロマイシン:Baf)を添加して生菌数を評価しました。図5に示すとおり、バフィロマイシン添加により生菌率が対照の約2倍に増加しており、オートファジーが好中球による殺菌に寄与している可能性が示されました。好中球の殺菌作用には活性酸素が重要であることが既に知られていますが、NADPHオキシダーゼ阻害剤(アポシニン:Apoc)を添加し活性酸素産生を抑制した条件でも、バフィロマイシン添加により好中球の殺菌能が低下しました。よって、オートファジー機構は活性酸素の産生が低下した場合において、殺菌における相補的な役割がある可能性が考えられました。

図5 オートファジー阻害剤・NADPHオキシダーゼ阻害剤の好中球殺菌能への影響(多剤耐性大腸菌)

オートファジー阻害剤・NADPHオキシダーゼ阻害剤の好中球殺菌能への影響(多剤耐性大腸菌)オートファジー阻害剤・NADPHオキシダーゼ阻害剤の好中球殺菌能への影響(多剤耐性大腸菌)

Itoh H, Adachi S, et al. J Leuk Biol 2015, 98: 107-17

先生の研究結果から、多剤耐性菌に対するIVIG療法についてどのようなことが考えられますか?

耐性菌による感染症は臨床的課題となります。その中で好中球の殺菌作用は、薬剤耐性のメカニズムとは無関係であるため、好中球を活性化するIVIGは治療上の選択肢となると思います。我々の研究において、好中球が存在していてもIgGがない系においては細菌に対してほとんど作用を示しませんでした。これは血液中の総IgG量が非常に少ない場合は、好中球を介した貪食・殺菌作用が効果的に作用できないことを示しており、このような状態が重症感染症の一因となりえます。今回、我々の研究においてIVIGが好中球のO2-放出、オートファジーなどを増加することにより多剤耐性緑膿菌・大腸菌に対する殺菌能を増強することを示しました。よって、抗菌薬の効果が期待できない多剤耐性菌感染症においてIVIGは有効であると考えられます。

Hiroshi Itoh et al. Enhancement of neutrophil autophagy by an IVIG preparation against multidrug-resistant bacteria as well as drug-sensitive strains. Journal of Leukocyte Biology (2015) vol. 98 no. 1 107-117.
doi: 10.1189/jlb.4A0813-422RRR (http://www.jleukbio.org/content/98/1/107.long)
©2015 Hiroshi Itoh et al; Creative Commons Attribution 4.0 International License (http://creativecommons.org/licenses/by/4.0/).

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