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IVIG WATCH!

【ギラン・バレー症候群関連】ギラン・バレー症候群の予後予測

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【ギラン・バレー症候群関連】ギラン・バレー症候群の予後予測

監修:近畿大学医学部神経内科教授  楠 進 先生

ギラン・バレー症候群の予後予測をめぐる現状

ギラン・バレー症候群(Guillain Barré syndrome:GBS)では有用性の高い治療法が確立された現在においても、後遺症を残す症例やQOLが十分でない症例がしばしば認められます。予後予測ツールは、重症化するリスクのある症例を的確に抽出し、より早期に適切な強度の治療を施すための選択材料を提供するものです。本項では、ギラン・バレー症候群の予後予測ツールを紹介します。

 

GBS予後予測の意義

近年、GBSに対してより効果的な治療を選択するために、予後関連因子を明らかにする研究が盛んです。
GBSは単相性で予後は良好とされ、半数以上の患者は発症後約半年で寛解するという認識が一般的です。しかしながら、日常生活に明らかな支障がないようにみえても、易疲労感、長距離歩行や全力疾走の制限などを感じている症例もあり、ADLが自立していてもQOLは必ずしも十分ではないことが指摘されています1)。また、重症例ではしばしば後遺症を残すだけでなく、死亡の転帰をたどるケースもあることが報告されています。免疫調整療法といった有用性の高い治療法が確立された現在でも、その治療効果は十分とはいえないのが現状です。
進行したGBSでは末梢神経の軸索変性が起こることで、治療効果に限界が生じる可能性があり、発症早期に適切な強度の治療を行うことが求められます。一方で、GBSの重症度や臨床経過は症例ごとに大きく異なるため、全例に集中的な治療を施すことは合併症のリスクなどを考慮すると合理的ではありません。より早期に適切な強度の治療を選択するためには、予後を予測して重症化するリスクのある症例を的確に抽出することが重要です。

GBS予後予測ツール

●EGOS(Erasmus GBS Outcome Score)2)

EGOSはオランダのグループが2006年に提唱した予後予測モデルです。後方視的解析によって抽出された独立した3つの予後予測因子、「年齢」「下痢の先行の有無」「発症後2週時のGBS機能障害スコア」に基づいて算出されたスコアによって、発症6ヵ月後に自力歩行が可能かどうか評価します。簡便であることが特徴ですが、機能障害スコアが歩行能力のみを重視していることに加え、予後の評価が得られるのが登録して2週後のため、治療導入時に評価できないことが問題でした。

●mEGOS(Modified Erasmus GBS Outcome Score)3)

EGOSの問題点の改善を目的として提唱された予後予測モデルで、より早期の、入院初日および7日後に評価が得られます。「年齢」「下痢の先行の有無」「入院直後または入院1週時の四肢筋力判定(MRC* 総score)」の3つに基づいて算出したスコアによって、発症4週後、3ヵ月後、6ヵ月後の歩行能力を評価します。

*: MRC:Medical Research Council(英国医学研究会議)

●EGRIS(Erasmus GBS Respiratory Insufficiency Score)4)

呼吸器不全による人工呼吸器装着は、機能予後および生命予後に影響を及ぼすことが知られています。Walgaardらが報告したEGRISは、「発症から入院までの日数」「入院時の顔面神経麻痺もしくは球麻痺の有無」「入院時のMRC 総 score」の3つを点数化し、人工呼吸器装着のリスクを評価します。入院1週間後の人工呼吸器装着の確率は、スコアが2点以下では4%ですが、5点以上では65%とされています。

●運動機能予後の予測:ΔIgG5)

IVIg療法開始後2週間での血清IgGの上昇の程度(ΔIgG)が、発症6ヵ月後の運動機能障害の予測因子とされています。Kuitwaardらは、入院時に歩行不能のGBS174症例を、ΔIgGの値によってグループ分けし、治療経過を観察しました。6ヵ月間の観察期間において、呼吸不全は41例、6ヵ月後の自立歩行不能は27例に認められましたが、これらのうち、呼吸不全症例の76%(31例)、自力歩行不能症例の85%(23例)は、ΔIgGが低いグループ(730mg/dL以下)でした。この結果は、ΔIgGが低いほど呼吸不全と自立歩行不能のリスクが大きいことを示唆しています。
予後不良例でΔIgGが低い理由については、重症例では疾患活動性が高いこと、感染症をきたしやすいことなどによってIgG消費量が大きいためと考えられています。

ΔIgG値による群別の自力歩行可能となるまでの日数

ΔIgG値による群別の自力歩行可能となるまでの日数ΔIgG値による群別の自力歩行可能となるまでの日数

Kuitwaard K, et al.: Ann Neurol. 2009; 66: 597-603.

Copyright 2009 Wiley. Used with permission from Kuitwaard K, et al., Pharmacokinetics of intravenous immunoglobulin and outcome in Guillain-Barré syndrome, Annals of Neurology, Wiley-Liss.

今後の展望

GBSの重症症例の中には、標準治療であるIVIg療法や血漿浄化療法への反応性が低く、満足な治療効果が得られない治療予後不良例がしばしば見られます。そうした症例を精度の高い予後予測によって発症早期の段階で特定し、より集中的な介入を行うことができれば、予後改善につながる可能性があります。
今回紹介した予後予測ツールは、いずれも比較的簡単な臨床観察によって短期〜中長期的な予後を予測できるため、今後多くの症例で利用されていくと考えられます(表)。
予後予測因子の研究は2018年現在も進行中です。GBSのより予測精度の高い臨床的・生物学的予後因子を明らかにするために、国際的な前方視的観察研究IGOS(International GBS Outcome Study)が2012年から行われています。さらに、日本人と欧米人では疫学や臨床病型の傾向が異なることから、標準治療への治療反応性も異なる可能性があり、日本人のみを対象とした予後予測因子の解析が求められていました。こうした背景を踏まえ、2018年現在、本邦においてもIGOSのプロトコルを一部踏襲した研究が行われています。これらの研究の成果によって、より精度の高い予後予測が可能になることが期待されています。

(表) 予後予測ツールの比較

(表) 予後予測ツールの比較(表) 予後予測ツールの比較

【後方視的本邦データ】日本人に対するGBS予後予測ツールの有用性6)

監修:近畿大学医学部神経内科 山岸 裕子 先生

上記のような、オランダの研究グループを中心に提唱されたmEGOS、EGRISなどの予後予測ツールは高い有用性が認められていますが、主にヨーロッパにおける解析結果に基づいています。日本人と欧米人では軸索型GBSやフィッシャー症候群の発症頻度が欧米人よりも高いことなどを考慮すると、予後関連因子についても地域や遺伝学的背景によって異なった結果を示す可能性があります。そこで、これらの予後予測ツールが本邦においても適用できるか検討するため、日本人患者177症例を対象にmEGOS、EGRIS、ΔIgGの妥当性の評価が行われました。その結果、いずれの予後予測ツールも精度の高い予測が得られ、日本人に対しても適用が可能であることが明らかになりました。

引用文献
1)
海田賢一: Brain and Nerve 2015; 67: 1411-1419.
2)
van Koningsveld R, et al.: Lancet Neurol 2007; 6: 589-594.
3)
Walgaard C, et al.: Neurology 2011; 76: 968-975.
4)
Walgaard C, et al.: Ann Neurol 2010; 67: 781-787.
5)
Kuitwaard K, et al.: Ann Neurol 2009; 66: 597-603.
6)
Yamagishi Y, et al.: J Peripher Nerv Syst 2017; 22: 433-439.
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